自然の中で過ごすことは、とても良い時間です。テント設営から始まり薪割りや火起こし、料理、普段は感じない不便さも、回数を重ねることで、楽しさを感じるようになるのではないでしょうか。
耐久性・耐熱性に優れるとされる牛床革を一枚革のまま使用したこのエプロンは、素材の選定、設計や縫製の細部にもこだわりながらも必要最低限の機能としました。シンプルで飽きのこないデザインとすることで長くご使用頂ける製品になっております。また、革の特性である経年変化(エイジング)も、このエプロンを使う楽しみとなります。
左:製作直後のエプロン 右:5年使用したエプロン
また、良い物を大切に扱うことは重要ですが、そればかりに気を取られていては楽しくありません。汚れや傷こそ個性になる、貴方だけのパートナーとして、ハードにご使用頂ければと思います。
溶接手袋にも使用される、軽く丈夫な床ベロア革を使用
・薄く、軽い
・耐久性に加え、耐熱性にも優れる
・切創、摩擦に強い
・メンテナンスフリー
・ゆっくりと、少しずつ風合いが変わっていく
今回仕様した素材である国産クロムなめしの床ベロア革の強さは、プロの現場でも重用されていることで実証されています。SKLOと同じく工都川崎に工場を持つ金属加工の会社の方や溶接業に従事する、私の兄にも話を聞き、その特徴を確認しました。
兄は開口一番「本当は革が一番いいんだ!」と言いました。現場では会社から支給されるデニム(綿)のエプロンを使用することが多いが、一般的には燃えにくいとされる綿のエプロンでも、1週間ほどで穴だらけになってしまうこともあるとのこと。
また天井溶接をする際などには、しっかりと防護する必要があり、ベロア革でできた頭巾を頭にかぶるそうです。
一方、川崎市内で金属加工を行う株式会社上代工業さんにご協力いただき検証を行いました。
火花を大量に出すために出力を大幅に増して溶接を試しましたがエプロン表面に穴が開くなどの目立った変化はありませんでした。
※特定条件下での自社検証であり、結果を保証するものではありません。
伺ったころによると溶接時に出る火花はスパッタと呼ばれ、火花発生時には2000〜3000℃にもなるそうです。
※焚き火の火の粉発生時の温度はおよそ800℃。
この起毛したベロア革は強いだけでなく、使い込むにつれてより柔らかくなり、使用者にフィットしていきます。キャンプでの作業中、何度も付け外しすることなく長時間着用しても肩への負荷が少ないという点で適した素材であり、焚火エプロンに最適だと判断しました。
通常、SKLOでは環境に配慮された自然由来の成分でなめされた植物タンニンなめし革を使用していますが、今回は機能面をより重視し、軽量で伸縮性があることが特徴であるクロムなめし革の起毛革である床ベロア革を採用しました。
調べてみると、銀面の革(通常の革)で作られたエプロンには1kg以上の製品もありました。対して今回の製品は約620g(シンプルバージョンは約550g)に重量を抑えることができました。床ベロア革の厚みは個体や部位により若干の差はありますがわずか1.5mm〜1.8mmであり薄さ(=軽さ)と丈夫さを兼ね備えた素材です。これは床ベロア革を採用する大きな理由の一つであり、男性はもちろん女性でもご使用いただき易いのではないかと考えています。
また、起毛革は熱、切創、摩擦に強いことが特徴です。
起毛革の中でも最も毛足が長く、牛床革の裏面を起毛させたものをベロアと言います。今回採用したベロア革(牛革)は豚や羊といった小動物を加工するスエードよりも起毛感が粗くカジュアルな風合いに仕上がるため、自然の中で行うキャンプに合う素材だと思いました。
つぎはぎがない、だから強い
一枚革である”という点も大きな特徴になります。
何枚かのパーツを組み合わせる、縫製して製品を作り上げるということは、それだけ”解れ”を生じさせる可能性があります。そのためこのエプロンは革一枚丸ごと使用しています。革の繊維を断ち切りバラバラに組み合わせることは、丈夫さだけでなく見た目にも好ましくないと私たちは考えています。
贅沢にはなりますが、機能性と見た目の良さの両立にこだわってモノづくりを行なっています。
必要最低限のデザイン・機能
だからこそ、長く使える
テントやテーブルの設営、薪割りや運搬、火起こしなどキャンプや焚き火、調理など、たくさんの楽しい作業があります。それに伴って使用する道具も複数あります。エプロンの前面に配置したポケットは、これら多くのツールを収納できます。例えばペグやナイフ、火吹き棒など。また、ループにはタオルやハンマーなどを掛けておくことができ、必要な時にパッと手に取ることができる様にしています。
ポケットをつける際に特にこだわったのは、ツールの出し入れのし易さです。浅く(約160mm)、広い(275mm)形にしているのには理由があります。
※実際の製品ポケットは写真より深さが15mm、横幅が5mm大きくなっています。
ポケットが浅い作りになっていることで座ったままでモノを出し入れしやすくなります。逆に深いポケットの場合は、一度立ってから手を入れないとライターを取り出せないといったことが考えれます。一見シンプルな作りのポケットですがシンプルが故に汎用的に使いこなすことができるポケットです。
また、ポケットが横に広くなっていることで、左右どちらからでもモノの出し入れがしやすいというメリットがあります。テンポよく作業を進められるので、焚火などがより楽しくなります。
荷物の運搬などの準備段階から、テント設営、焚き火や調理、手に取るツールはそれぞれのキャンプシーンで異なり、携行しておくモノが徐々に増えていきます。それらを細かく分かれたポケットに入れて全てを一緒に持ち歩くことは、重さもありあまりないと思います。
例えば私の場合、テントやタープ設営時にはハンマーをループにぶら下げ、ペグをポケットに入れます。焚き火の時は音楽や写真を撮るためのスマートホン・火吹き棒・ライターなどをポケットに入れて出し入れを行います。また食事の用意をする時には料理用のナイフをポケットにしまいループにはタオルをかけます。
ポケット底面には当て革をすることで尖ったもので縫製や革を直接傷つけない構造にしてあります。加えて、重さがあるものや尖った物体が入っても壊れ難い様に、最も負担がかかるポケットの入れ口は二重にし補強して革の断面(コバ)を見せないつくりになっています。
これは職業用の美容師が使うシザーケースやトリマーが使うトリマーケース、お花屋が使うフローリストケースをSKLO(スクロー)が長年製作してきた経緯があり、そのノウハウを取り入れています。
また、コーティングによって補強された堅牢な工業用インボンドミシン糸を使用して縫製を行なっています。
ループは重さに耐えれる様、二重にし縫製するだけでなく真鍮カシメを打ち込みました。さらに裏側には当て革を施して強度を増しています。
また、エプロンのループにひっかけて使用できるグローブホルダーも販売致します。
グローブホルダーはALL LEATHERの革の肩紐と同じ天然由来の成分でなめされた植物タンニンなめし革(オイルレザー)を使用しています。ホック式なので止めやすく外しやすいのが特徴です。カラビナやジャンパーホック金具には真鍮を使用しています。ループ直径約70mm。
※一般的な耐熱手袋を想定した大きさとなっています。
※革の色は写真のBrownまたはBlackの2色からお選び頂けます。
長時間使用での負担を軽減、
クロスする肩紐
肩紐は背中で X にクロスする仕様にこだわりました。
肩紐は背中で X にクロスする仕様にこだわりました。革工房の現場でもエプロンはよく使用するのですが、着用時間が長くなるにつれ、首にかけるタイプのエプロンは首、特に頚椎に負担を大きく感じます。今回の製品ではキャンプツールを収納するなど重さが加わるため、なおさらこの点について考慮しました。
肩紐の素材は、キャンプにも使用されるオイルランタン(ハリケーンランタン)から着想をしてその芯を採用しています。キャンプへの愛着につながると考えたこと、加えてその素材が綿100%であり難燃性も焚き火エプロンには適しています。
ALL BLACKをご指定の場合には革の肩紐とクロスパーツもBlackで製作いたします。
※BLACKは試作段階に撮影した写真です。完成品は継ぎ目のない肩紐をご用意いたします。
耐熱性に優れ、鍋つかみとしても使える
柔らかく耐熱性にも優れた革のため、ダッチオーブンなど鍋・取手を掴むことが出来ます。
グローブがすぐ手に届く場所にない、直火に触れる時間がそこまで長くないのであれば、エプロンの裾を使って、サッと作業を進めることが出来ます。
人を守り、いつも共にあった「革」
牛や豚など動物から生産される皮革は、古来から重宝されてきました。天候の変化、物理的な衝撃による傷等から、人は革に守られて生活をしてきました。
あまり知られていませんが、皮革は吸湿・保温性に優れていて、伸縮性もあるので使うほどに体に馴染んできます。人にとって極上の素材ではないか、と私は考えています。
ようやく出会えた、焚火エプロンというアイデア
SKLO(スクロー) では2021年春よりキャンプに特化したレザープロダクトを展開しています。その顔となる製品を作りたいと思い、さまざまな企画を考えていました。
革の特性を最大限に活かし、より多くの人にその良さを知ってもらうこと。自分が使用したいと思える製品を作ること。そのためにシンプルかつ機能的なデザインを考え抜くこと。
そうしたSKLOの想いを込めた、焚火エプロン。ぜひ、皆様にもご使用頂ければと思います。